裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
みるみるうちに、姿かたちがはっきりとわかるまで、その集団も近づいてきた。
みな揃って角刈りの頭髪に、ねじりはちまき。
腰には黒いゴム製のエプロンを巻いている。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
なにかに吸い寄せられるように、リュックサックの置いてある椎の木を目指すカオリ。
そのあとを少し離れて、ひとかたまりの集団が駆けてくる。
ひい、ふう、みい――ざっと見て、十人足らずか。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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公園の入り口を抜け、黒い人影が全力疾走で近づいてくる。
いや、あれはギャロップ――なんてスピード!
たなびく黒髪、全身黒ずくめの衣服――まちがいない!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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風通しのよさだったら、ストッキングのほうがよかったかな?
明日でかけるときは、念のため、ストッキングも持っていこう。
ん?――あれは?――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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あいつら、早くリックサックを見つけてくれないかしら。
早く帰って、シャワー浴びたい。
筋肉マンって、よく年がら年中、マスクなんてかぶってられるわよね。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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太めの枝に腰掛け、リュックサックを置いた木を見張る。
かぶっているコンビニ袋の中が、汗でベトベトしてきた。
首元に隙間を開け、なるべく空気の通りをよくする。
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さあ、あとはあいつらが釣れるのを待つだけね。
落ちているゴミ袋を拾い上げ、丸めてポケットに突っ込むと、少し離れたところに生えている椎の木に駆け寄り、幹にしがみついて、よじ登った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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リュックサックのファスナーを少し開け、ポケットから、先ほど手紙を書き込んだチラシを取り出し、差し込んだ。
立ち上がり、顔の高さで二股にわかれた木の幹の間に、リックサックを挟むように置く。
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もういちど周囲を見渡し、近くに誰もいないことを確認すると、手に提げていたゴミ袋を地面におろした。
しゃがんで力任せにゴミ袋をやぶくと、中からリュックサックを引っ張り出す。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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これといって不審な人物は見当たらない。
さあ、さっさと仕事を終わらせよう。
私は、目に付いた椎の木の一本に近寄った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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さあ、公園の緑が見えてきたわ。
あいつら、まさか公園でたむろしてなければいいんだけど。
様子をうかがいながら、公園へと足を入れた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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母親はこどもの目を覆ったまま、そそくさと私から遠ざかっていった。
もしかして、目立ってるのかしら、私――
とにかく、親子の絆がふたたび固く結ばれたみたいで、安心したわ。
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「しっ! 見るんじゃありません!」
母親はあわてて、こどもの目を両手で隠した。
なんだ、結局、長芋買ってもらったんだ。
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「ママー! あれ、なに? どうしてビニールなんか、かぶってるの!?」
すれ違いざまに、こどもが手にした長芋で私を指しながら、声を上げた。
ん? なんでこどもが長芋なんか――あれ? この親子、さっきの――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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無言でひたすら公園を目指す。
だんだん、コンビニ袋をかぶった頭が、熱気を帯びてきた。
額にうっすら汗が浮かんでくる。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ゴミ袋を肩にかけ、アパートをあとにした。
早足で蚕糸(さんし)の森公園へと向かう。
元気よく、あの掛け声をかけたいのだけれど、カオリに聞かれたら、すぐに正体がばれてしまう。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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おっと、こんな匂いのするリュックサック、はだかで持ち歩くのは危険だわ。
さいごのさいごでカオリに嗅ぎつけられでもしたら、元も子もないもの。
もういちど家に戻り、二重に重ねたゴミ袋にリュックサックを入れ、口をきつく結んだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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これでよし――
チラシを折りたたみ、ポケットに入れ立ち上がった。
コンビニ袋を再びかぶり、リュックサックを肩にかけ家を出た。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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こんにちは。
このリュックサックとにんにく醤油の匂いで、私のこと、誰だかすぐわかると思います。
これまでいろいろ迷惑かけて、すみませんでした。
自分を深く省みようと、私は西に向かって旅に出ます。
決して捜さないでください。
私は独りで西に向かいます……
Y子
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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しばらく風を当て、シミになった箇所が乾くと、ドライヤーをしまい洗面所から出た。
リビングに戻り、部屋の隅に積んであったチラシの一枚を拾い上げる。
PCの脇に転がっていたペンを掴むと、テーブルに座った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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スプーンを流しで洗い終えると、リュックサックを持ち、洗面所に入った。
ドライヤーのコンセントを差し、醤油のシミの上から温風を当てる。
はねかえる暖かい風に乗り、香ばしいにんにくの匂いが広がった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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黄色い布地に、こげ茶色のシミが広がっていく。
醤油を垂らし終えると、スプーンをくわえて舐めた。
――あ、美味しい。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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そのまま、こぼさぬよう、静かにスプーンをリュックサックの底のあたりに近づけた。
なんだか、せっかく洗いたてなのに、悪い気がするけど――
私は意を決して、スプーンを傾けた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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即席だけど、あいつらを欺くにはこれで十分だわ。
床に放り出してあったリュックサックを拾い上げ、テーブルの上に置いた。
作りたてのにんにく醤油を、スプーンでひとすくいする。