裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
主婦にとって、その程度の情報、基本中の基本だものね。
あさはかだったわ――私のバカ、バカ!
私は陳列棚に、なんども頭を打ちつけた。
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「もうカゴに入ってます!」
母親はぴしゃりと言い放った。
「あ、はい――」
私はなぜだか、恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。
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ええーっと――
私は陳列棚の陰に隠れたまま、ドスのきいた声で言った。
「お、奥さん、今日はニラが3束100円らしいですぜ」
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一瞬だったから、顔をはっきりとは見られてなかったみたい。
けど、まずいわね、ここはこのままレジに向かったほうがいいわ。
さて、なんと言ってごまかそう……
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「ちょっと、そこに隠れてるアンタ! アンタもなにか言いたかったんじゃねーのか?」
えー!? もしかして、私のこと?――しっかり気付いてる!
「さっきは話に割り込んで済まなかった! だが、オレもどうしてもひとこと言ってやりたくてよ」
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と、私もこんなところで油を売ってる場合じゃなかったわ。
イカゲソがこの親子に気を取られてる隙に、さっさとレジで支払いを済まさなきゃ。
じゃ、私はこれで――
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「だいたいあなた、これはうちの家庭の問題ですよ? 口を挟まないでください!」
母親は怒りをあらわにした。
そうだそうだ、もっと言ってやって!
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「そ、そんなこと、あなたにわかるものですか……」
母親が憮然とした口調で答えた。
「いや、わかるね。 オレにはわかる」
なんなんだ、このイカゲソの根拠の無い自信は……
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「いいか、こどもは親を選べないと思うか? いや、ちがう。 こどもはな、親を選んで生まれてくるんだ」
――はぁ? イカゲソ、あんた、いったい、なにを言い出すの?
「この子はな、生まれる前から、長芋好きだったんだ」
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なんなの? イカゲソ、あいかわらず、おせっかいなヤツね。
母親が返答に困ってるじゃない。
けど、ほんと危ないところだったわ。
私が先に母親と話を始めてたら、確実にイカゲソに見つかってた。
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「な、なんですか? いきなり……」
母親はとまどいながら答えた。
「アンタ、ほんとにこのぼうずが、アンタのもとから去って行ってもいいのかって、聞いてんだよ」
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あわてて私は、陳列棚の側面に引っ込んだ。
さっきまで、イカゲソが店の中にいた様子はなかった。
どうやら、私のあとに入ってきたらしい。
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誰!? ちょっと! 邪魔しないでよ!
母親と床にしゃがみこんでいるこどもを挟んで、私の反対側から現れた声の主――
げえぇ――イカゲソぉ?――
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陳列棚の裏側に回り込むと、足を開いて腕を組み、こどもを見下ろしている母親の背中が見えた。
忘れちゃだめ!
その背に子を負った、あの懐かしき日々を!
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今、目の前で――陳列棚越しだけど――ある家族が不幸に陥ろうとしてる!
直観的にそう悟った私は、買い物カゴを放り出し、駆けだした。
だめよ――待って!
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「もう言わない! 長芋って――ひっく――言わないから、うわーん――」
「もう、おかあさんは、こんな子知りません!」
――いけない! これは育児放棄だわ!
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「もう、勝手に好きなうちの子になればいいわ!」
「うわーん、ごめんなさい、ごめんなさい――」
とうとう、こどもは泣き出してしまった。
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「え? やだ、やだよぅ、ぼく、おかあさんちの子がいいよう!」
こどもは今にも泣き出しそうな声で言った。
「おかあさんちの子は、長芋長芋ってしつこく言ったりしません!」
母親はぴしゃりと叱りつけた。
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「ほんとだってばぁ、この前ひろしくんちに行ったら、おっきな冷蔵庫がふたつあったもん!」
「あーもう、しつこいわね、この子は――」
母親はだんだんイライラした口調になってきた。
「そんなに長芋が食べたいなら、ひろしくんちのこどもになればいいでしょ!?」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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と、陳列棚を挟んだ反対側から、さきほどのこどもの声が聞こえてきた。
「だってさぁ、ひろしくんち、毎日長芋だって言ってたよ? 長芋専用の冷蔵庫もあるんだって!」
「そんな、わざわざ長芋専用の冷蔵庫を買ううちなんて、あるわけないでしょ!? 見得を張ってるだけよ、ひろしくんは」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ほんとは長ネギも買いたいんだけど――
明日からまた旅に出るし、残して腐らせるのも、もったいないわ。
代わりに、にんにくを刻んで入れよう。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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これからごはんを炊くの面倒だわ――
即席めんでいっか――
乾麺の並んでいるコーナーに行き、サッポロ一番味噌ラーメンを2袋カゴに入れた。