裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「技術点と芸術点で、計200点」
大家さんは、あいかわらずカオリと対峙したまま、答えだけをを返した。
――やっぱり聞かなきゃよかった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
自分では、大家さんのものまね、けっこう自信あったのに――
真似された本人って、認めたくないものかしら?
念のため聞いてみよう。
「あの……、それって100点満点ですか?」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
がーん――――
いくらピリピリしてるからって、そんな明け透けに言わなくても――
しかも、私が言ったって、カオリにもバレちゃったわ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
――どう? 私が言ったって、バレてないわよね?
「似てない! 40点!」
大家さんは仁王立ちのまま、振り向きもせずに言った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私は大家さんの背中に寄り添い身を隠すと、彼女の声色を真似て叫んだ。
「それに! 裕子ちゃんの掛け声、勝手に使いなさんな!」
よし! 言ってやった! 言ってやったわ!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「あら……あなたは……」
カオリは私に気付き、大家さん越しにこちらをのぞき込んだ。
――わ、私だって、なにかひとこと言ってやらなきゃ!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「それに……小回りが効くよう、ギャロップからスキップに、切り替えてたし……」
――ほら! 私の見抜いた通りだわ!
大家さんの背後で、私は満足げにうなづいた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「この、私が守るアパートの敷地内で、勝手な真似はさせないわ」
大家さんの気迫に圧されたのか、カオリはその場で足を止めた。
「べつに……、あなたに、迷惑を掛けるつもりはないわ。 人を捜しているだけ……」
カオリは抑揚のない、醒めた口調で言った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
いや、大家さん、それはス――
「ちがうわ……これは、スキップ……」
右脚、左脚、右脚――
カオリはスキップを止めず、こちらに向かってくる。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「廊下はギャロップ厳禁!」
大家さんが仁王立ちになり言った。
「いきなりドアが開いて、中から人が出て来でもしたら、危ないでしょ!?」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
廊下の端々に置かれている、洗濯機だの植木鉢だの三輪車だのにつまづかず、まっすぐ歩を進めるには、たしかにギャロップよりもスキップのほうが安定しやすい。
理にかなってるわ――たしか、カオリ――だっけ?
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
一瞬、彼女の手元で、なにか光るものが見えた気がした。
――が、すぐに袖の中に引っ込んだ。
彼女は玄関を入り、こちらに向かってゆっくりギャロップで近づいてきた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
アパートの玄関先を黒い影が、掛け声を発しながら、ギャロップで通り過ぎていくのが目に入った。
「なにかの宣伝活動かしら……」
大家さんは、とまどった表情で玄関のほうを見つめている。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
ちょっと! なに勝手に私の掛け声使ってるの?
きっと、さっきの匂いフェチの人だわ。
――それにしても、物騒な掛け声ね、品格を疑うわ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
と、遠くのほうで、かすかに女性の掛け声が聞こえたような気がした。
気のせい? 私は耳を澄ましてみた――
「――――蚕糸♪ にぃ にぃ 蚕糸♪」
まちがいない、だれかが掛け声とともに、こちらに向かってきている――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
のどかな陽気――煙は風に乗って空へとのぼり、やがて消えていく――
ほんとうに私が、得体の知れない人物に追われているかもしれないなんて、なんだか信じられない。
そうだ、お昼を食べたら、気晴らしに、また蚕糸(さんし)の森公園まで散歩に出ようかしら――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「あら、いいのよ。 住居の修繕も、大家の役目だからね」
大家さんは、これっぽちも迷惑そうな顔をせずに言った。
ゆるゆると、大家さんの口から広がる煙――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「うん、大丈夫。 さ、これで今夜は安心して眠れるわね」
大家さんは、ドライバーを工具箱に戻すと、パイプに煙草を詰めなおし、火を点けた。
「ほんとうに……いろいろ、すみません……」
私は昨夜のことと併せて、大家さんに頭を下げた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「裕子ちゃんも、騒音を立てていた人たちについて、なにか手がかりをつかんだら、すぐに教えてね。 おばさん、注意するから」
うん! ぜったい教えない!
大家さんは作業を終え、なんどかドアノブを回して、取り付け具合を確認した。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「たぶん、なんどかドアが倒れた衝撃で、ノブの取り付けが緩んじゃったのね。 大丈夫、すぐに直してあげるから」
大家さんはパイプをくわえなおすと、工具箱を開けてドライバーを手に持ち、ドアノブを取り付けにかかった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「やだ、裕子ちゃんったら……クックックッ、絶妙のタイミングでノブが取れるんだもの……」
大家さんは、笑いをこらえながら言った。
どうして!? 刈名谷さんに付けてもらったばかりなのに!