裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
才能って人それぞれ――
私になにができるか、今すぐには思いつかない。
けど、ここでクヨクヨしててもしょうがないわ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
やっぱり、どうせ吐くなら、蚕といっしょで実用的なもののほうがいいに決まってる。
となると、しょせん人間である私には、無理な話、か――
つい、私は弱音を吐いた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
いや待って――
なにかを吐き出すのと引き換えに犯罪を犯すなんて、馬鹿げてるわ。
それに、カツ丼代って、あとで容疑者に請求が来るって言うし――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
じゃあ、ほかに、吐けるものあるかしら?
そうだわ、取調室でカツ丼食べたら、きっとなにか吐かなきゃならない気になるかも――
そのためには、まず逮捕されなくちゃ!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
昔、グレート・ムタというプロレスラーがいた。
彼はリングの上で、口からさまざまな色の毒霧を吹いた。
私も小学生のころ、なんどかオレンジジュースで毒霧に挑戦してみたけど、どうしても、もったいなくて、口に含んではそのまま飲み込んでしまったものだった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
うーん、おいしい!
きっと昔、蚕たちも、おいしい空気をたくさん吸って、どんどん良質の糸を吐き出していったのね。
――じゃあ、いったい私は、なにを吐き出せるのかしら。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私の住むアパートは、蚕糸の森公園を抜けた、ちょっと先にある。
公園に入ると、緑の香りが私を取り巻いた。
むっはぁああああああ~
思わず胸いっぱい、空気を吸い込んでみた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
ここはかつて、公園になる前は、蚕糸試験場があったらしい。
秋になると、公園内に椎の実がたくさん落ちているので、よく拾ってきては、フードプロセッサーで粉末にし、ホットケーキミックスと混ぜて焼いて食べている。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
この手の話って、みんな信じるものなのかしら?
それとも、関わり合うのがめんどうだから、てきとうに話を合わせてくれただけ?
駅の外に出る階段を上ると、目の前には蚕糸(さんし)の森公園が広がっていた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
駅員のいる改札にまわり、事情を説明した。
「……そう、たいへんだったね。 まさか途中で酸素ボンベが切れるなんて……」
同情の眼差しで駅員は言い、改札を通してくれた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
車両を降りて、改札に向かう。
自動改札口に切符を入れると、ピンポーンと電子音が鳴り響いた。
ああ、そうだった、浦安までの切符を買ったのに、そのまま戻ってきちゃったから――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「次は、東高円寺、東高円寺」
車内アナウンスが流れた。
いつのまにか、眠っていたらしい。
あやうく寝過ごすところだった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
そういえば大家さん、アパートのドア、直してくれたかしら?
推理に夢中で、忘れてなければいいけど――
お昼ごはん、どうしよう――
どうせ家に帰るんだし、モヤシ買って、モヤシ炒めでも作ろうか――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
反対側のホームに移ると、ちょうど、電車が到着した。
念のため、車内の乗客の顔ぶれに注意しながら、電車に乗り込む――
大丈夫のようだ。
空いている席に座り、うつむいて目を閉じた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
そうと決まれば、さくら姉さんの手が回らないうちに、さっさと帰るべきよね。
ベンチを立ち、反対側のホームに渡る階段に向かう。
ベンチから少し離れた場所で壁にもたれかかっていた、さきほどの年配女性が、またいそいそとベンチへと戻って行った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
ただ、あのふたりが私の容姿や特徴を、正しく伝えられるかしら?
今日は出発が遅くなった上に、途中で色々あったし――
もし、無事に自宅に戻れるようなら、ゆっくり休んで、明日の朝、あらためて浦安に向かったほうが安全かも――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
このまま浦安を目指せば、またピーナッ子たちと遭遇する可能性大だ。
けど、高円寺に戻ろうにも、さくら姉さんとやらが、待ちかまえてるかもしれない。
行くも戻るも地獄ね――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
吸うぅぅぅぅう~ 吐くぅぅぅぅう~
吸うぅぅぅぅう~ 吐くぅぅぅぅう~
ひとつひとつの動作を確認しながら、丹念に深呼吸を繰り返す。
先にベンチに座っていた年配女性が立ち上がり、そそくさと、どこかへと去って行った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
だめ! だめ!
私は、こぶしを握りしめ、なんども自分の膝に打ちつけながら、ホーム備えつけのベンチに、よろよろと向かう。
ベンチに腰をおろし、震える脚を投げだした。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
だから、いくら車内で走っても、こっちには来れないんだって。
懲りないやつらね――
さて、当面の危機は脱した。
けど、あの、さくら姉さんという人物の存在が気になる。
さきほどのふたりの会話を思い起こし、またカタカタと脚が震えだした。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
徐々にスピードを上げる電車。
ふたりは慌てて立ち上がると、こぶしを振り上げ、なにかをわめきながら、電車の進行方向とは逆方向に車内を走ってくる。
だが、すぐに電車は、暗闇のトンネルへと吸い込まれていった――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
電車がゆっくり動き出した。
と、私に挨拶でもしようと思ったのか、ピーナッ子たちは座ったまま振り向き、窓ガラス越しに私の姿を目でとらえた。
ふたりの顔に浮かぶ、驚愕の表情――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
ホームに降り立つと同時に、ドアは閉まった。
すかさずリュックサックを下ろす。
ああ、疲れた。
あしたは、きっと筋肉痛ね。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
イカゲソはピーナッ子の肩に手を回し、やさしく髪を撫でながら、彼女の横顔を見つめている。
これは好都合だわ。
ガラスに映る私の顔を見られたら、アウトだものね。