裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「だめ……あたし、見てらんない……」
ピーナッ子が両手で顔を覆い、イカゲソに寄りかかった。
「ああ、わかるぜ、トラウマだもんな、ムーンウォークは……」
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ガラスに映る景色を見ながら、封印したはずのムーンウォークで、開いたドアに向かう。
「こ、この歩き方が……いちばん身体に負担をかけないから……」
言い訳をしながら、私はドアに近づいていった。
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まずいわ、もたもたしてると、ドアが閉まっちゃう!
こうなったら、背に腹は代えられない――
私は身をひるがえし、ピーナッ子たちに背を向けると、顔に当てていたリュックサックを下にずらし、視界を確保した。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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電車は中野坂上駅に着いた。
ピーナッ子たちが座っている座席側のドアが開いた。
私は顔にリュックサックを押しつけたまま、前かがみに立ち上がり、ドアに向かおうとした。
――しまった! 前が見えない!
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「もし次、いっしょに浦安に行くことがあれば、換えのボンベをたくさん用意しといてね。 あたしたちも半分持つからさ!」
ピーナッ子が言った。
なんでそこまでして、私といっしょに行きたいわけ?
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電車が減速し始めた。
「だから……私、今日はここで降りて、酸素を補充するわ……」
「……そうか、じゃあしかたねーな。 命にかかわることだもんな」
イカゲソが残念そうに言った。
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「わかった! つまり、ジュンカンキ系に弱いから、新宿駅に近寄れないってわけか! 納得したぜ」
イカゲソが声を上げた。
バカは、都合よくものごとを解釈してくれるので、とても助かる。
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「え? 循環器系って言ったら、ええーっと……アレよ……ぐるぐる回る山手線のことよ。 シブヤ系やアキバ系まとめて、山手線系とか循環器系って言うのよ」
「へぇー、ナツコって、物知りなんだなぁ」
感心するイカゲソ。
あら、ピーナッ子の名前は、ナツコって言うんだ――けど、ほんと見栄っ張りよね!
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私は話をつづけた。
「私、こどもの頃から循環器系が弱くて……酸素ボンベ無しには、外に出られない身体なの……」
「おい? ジュンカンキケーってなんだよ?」
小声でイカゲソがピーナッ子に聞いた。
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「そう……あまり目立たないよう、リュックサックっぽく見せてるけど……」
「あー、そうか! どうりでアンタの声、甲高く聞こえると思ったぜ」
いや、イカゲソ、声が高くなるのはヘリウムガス。
私が吸ってるのは酸素だから!
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「もうじき……この、リュックサック型酸素ボンベが切れるわ……」
「え? それ、酸素ボンベだったの?」
ピーナッ子が聞いた。
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「ふたりとも……よく、聞いて……」
かすれた裏声で、私は言った。
「お、おい、そういえばさっきから、肘ついて辛そうにしてるけど、大丈夫か?」
イカゲソが聞いた。
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「アンタ、それでいいの!? いつまでも、新宿を越えられない女のままで、いいの!?」
うん、それでいい!
「そうだよ、オレたちになにができるかわからねーけどよ、浦安までいっしょにいてやることぐらい、できるぜ!」
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「えー、お申し出はたいへんうれしいのですがー、わたくしー、次の駅に用事がございましてー」
「だめよ! 逃げちゃだめ!」
ピーナッ子が声を上げた。
いや、たのむから、このまま見逃して!
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えー!? なに言い出すのよ、ピーナッ子!
なんで私があんたたちと一緒に、旅しなきゃいけないのよ!
だめだ、腕も限界だ。
とりあえず、顔にリュックサックを押し付けたまま、肘を膝の上についた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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え? ピーナッ子があやまった?
こいつ、案外いいヤツなのかも――
ピーナッ子はつづけた。
「ねぇ、ここで一緒になったのも、なにかの縁。 だったらアンタ、あたしたちといっしょに、新宿の向こう側の世界に、飛び出してみない?」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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さっさと次の駅で、降りてしまおう――
すると、ピーナッ子が口を開いた。
「悪かったわ。 べつにだますつもりはなかったんだけど……」
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「たとえそれが、実現不可能だったとしても……私は一歩でも、夢に向かって前に進んで行きたい……」
私のつぶやきが耳に入ったのだろう、向かいの二人は、しばらく押し黙っていた。
しかし、リュックサックを持ち上げて、顔に押し付けていた腕が、だんだん疲れてきたわね。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ちょっと待て、ポケモンスタンプラリーって、JRじゃなかったっけ――
所詮はピーナッ子、詰めが甘いわね。
私をだまそうったって、そうはいかないわ。
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すると、こんどは私に向かって、ピーナッ子が取り繕うように話し出した。
「いや、その、浦安にはね、じつは何にもないの。 けど、あたしたち、ほら、ポケモンスタンプラリーに参加してるでしょ? だから、イヤでもそっちのほうまで行かないと、スタンプ全部、集められないのよねぇ……」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「あ? ああ……そうだな。 話聞いて、夢ばっか膨らんでも、かわいそうだもんな……」
イカゲソも声を潜めて、ピーナッ子に答えた。
かわいそうなのは、あんたたちの脳みそよ!
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「え? アンタ知らないの? 浦安って言ったら、もちろ……イタッ」
ピーナッ子がイカゲソの足の甲を、思いっきり踏みつけながら、小声でたしなめた。
「ちょっと、やめなさいよ! この人、新宿から先に行けない身体かもしれないのよ。 悪いでしょ?」
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けど、もしかしたら、大ネズミの生息地について、なにか手がかりを得られるかもしれない。
私はことさら大袈裟に聞いた。
「まあ! 浦安? 浦安ですって!? いったい何しに行くんですか!?」