裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
パチッ パチッパチッ パチッパチッパチッ
思い出したかのように、二人から拍手が沸き起こった。
「すげぇ! まさか丸ノ内線で、流しのポールダンサーに逢えるなんてよぉ! なぁ、おい!?」
「え? あ、う、うん!」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
激しく身体をゆすりながら、悟られないよう二人の顔を盗み見た。
ふふふ、どうやら、呆気にとられているようだわ。
なおもポーズを変え、ダンスを続ける私――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私は意を決して、勢いよく上半身を起こすと、両手を伸ばしてシートの端のポールに掴まった。
そのまま腕の力で身体を引き寄せ、ポールに絡みつく。
「わ、私は、さすらいの、ポ、ポールダンサー!」
そう言い放ちながら、こんどはポールに脚を絡め、ポールを軸に身体を回した。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「ちょっとぉ、寝たふりしたってむだよ。 身体が震えてるの、わかってんだから」
私の耳元近くでピーナッ子の声がした。
こうなったら、最後の手段――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
しまった! ピーナッ子のほうが、男よりも若干知能が高かったのね!
なんとしてでも、私の正体を知られてはならないわ。
でないと私、ハッピーターンの粉――あ、そうそう、たしかハッピーターンの粉って、ハッピーパウダーって言うんだっけ?――まみれにされちゃう!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私はいびきを止め、寝言に切り替えた。
「むにゃむにゃ……すみません、今のセリフ、もういちど……むにゃむにゃ」
「ん? ああ、だからよぉ、オレだったら、ハッピーターンの粉に」
男が答えるのをピーナッ子がさえぎった。
「バカ! なにすなおに答えてんのよ!」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
そ、それ以上どうしようって言うの!?
「オレだったら――を――して、――まで――」
だめだ! 自分のいびきがうるさくて、聞き取れない!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「だいじょうぶよ、ほら、あの通り、ぐっすり眠ってるわ」
「うっせーいびきだな」
まんまと、だまされてくれた。
「けど、オレはハッピーターンの粉まみれにしたくらいじゃ、気が済まねーぜ」
また男が話し始めた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「あの女! こんど会ったら、顔中にハッピーターンの粉をまぶして、むせ返らせてやるわ!」
「なんだおまえ、わざわざハッピーターンの粉、持ち歩いてるのか?」
「こ、これから集めるのよ! 今日からおやつは、毎日ハッピーターンだからね!」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
背中越しに、ピーナッ子(今そう命名した)の気配をうかがう。
「もういいだろ、その話は!」
男の答える声がした。
間違いない、昨夜のカップルだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私は慌ててシートの背もたれに向かって寝返りを打った。
それにしても、なんなんだ、あのアイメイク。
あいかわらず、ひどい――
そう喉まで出かけて、ぐっとこらえた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「だいたいねぇ、あんたがちんたらしてるから、あの女を逃がしちゃったんじゃない!」
そっと声の主に目を向けると――――
え!? まさか! あの、目がピーナッツほどの大きさしかない、ひどいアイメイクの女だ!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
ふだんは腰掛けるこのシート、こうして寝そべってみると、張りといい固さといい、なかなか寝心地が良い。
惜しいなぁ、もう少し幅が広ければ――
と、車両連結部のドアが開き、女が話しながら入ってきた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
車両内は人気もまばらで、シートをまるまる独り占めだ。
ドアが閉まり、電車が動き出した。
靴を脱いで、シートに長々と寝そべる。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
切符を買い、改札を過ぎる。
と同時に構内アナウンスが電車の到来を告げた。
まもなく電車が到着し、車両に乗り込んだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
すぐに、新高円寺駅の入り口に着いた。
地下への階段を降りる。
券売機前で、念のため路線図を確認したが、だいじょうぶ、片道270円だ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
商店街を抜けた――
いや、2歩下がって、また入った。
今度こそ抜けた――
青梅街道に沿って左に折れ、さらに歩きつづける。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
焦っちゃダメ、焦っちゃダメよ――
忍耐強く歩きつづけるうちに、青梅街道と交わる商店街の入り口が見えてきた。
新高円寺駅までは、もうすぐだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
商店街の人ごみの中では、気をつけて後退するようにしないと、うしろを歩く人にぶつかってしまう。
ときどき振り返っては、後方を歩く人たちに会釈をしながら、前進と後退を繰り返した。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
思わぬ時間のロスだ――急ごう。
4歩進んで、2歩下がる――4歩進んで、2歩下がる――
さきほどの倍の速さで歩を進めた。