裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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そんなことを思い出しながら、ピーナッツ入り南部せんべいのかけらに口をつけ、先に周囲の薄い耳だけをむしり取るように食べた。
甘い香りが口の中に広がる。
ふりかけは合うかしら?
いや、やめておこう。
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が、腋寂しいのか、代わりにポッキーを一本一本腋に挟んでは、
ポッキンナベイベー!
と掛け声を掛けながら割って食べるようになった。
と同時に増えた体重も少しずつ戻っていった。
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十分な糖分と脂肪分摂取のおかげで私の体重と偏差値は順調に伸び、一昨年の春、都内の大学に現役合格することができた。
大学入学後は、受験勉強のつらさを思い出したくなかったのか、キットカットはピタリと食べなくなった。
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そういえば高校時代、受験勉強に疲れるとキットカットを腋に挟んでは、
Have a break, Have a KitKat!
という掛け声とともに割り、口に運んだものだった。
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それ以来、人前で南部せんべいを腋に挟んで割ることは控えるようになった。
が、なにか固めのものを目にすると、つい腋の下に挟みたくなるのはきっと血筋なのかもしれない。
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南部せんべいはそうやって食べるもの――
自然とそう教え込まれた私は、中学生のときに友人宅で出された南部せんべいを腋に挟んで割り、友人とその家族のひんしゅくを買った覚えがある。
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そういえば、いちどだけ、どうしていちいち腋の下に南部せんべいを挟んで割ってから食べるのか、母に尋ねたことがある。
「――どうしてかしらねぇ?
あなたのおばあちゃんも、そのまたおかあさんも、みんなそうやって割ってたからねぇ」
と、母もはっきりとした答えを知らなかった。
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南部せんべいの袋を受けとり、開け口から中を覗くと、ピーナッツとゴマのこうばしい香りがした。
ピーナッツ入りとゴマ入り、それぞれのかけらを取り出す。
ピーナッツ……?
さきほどのピーナッツほどの目の大きさの女のことを思い出して、ちょっと嫌な気分になった。
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偶然の一致かしら。
本当の母も、いつも腋に挟んで南部せんべいを割ってくれたものだ。
ただ、母は右腋だったけど。
でも、それはきっと運転中だから、ハンドル操作をしやすいよう左腋に挟んだだけのことだろう。
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赤信号の交差点に差し掛かり、タクシーは停車した。
「食べやすく割っておいたから」
運転手は手早く南部せんべいの袋を開けると、振り向いて私に差し出した。
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「うん、食べたい」と私。
運転手は南部せんべいを袋のまま左腋に挟んだ。
んふっ
パキッ
運転手の声にならない吐息と、南部せんべいの割れる乾いた音が車内に響く。
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と、運転手は左手を助手席に伸ばし、なにかの袋を引き寄せた。
「南部せんべい食べる?」
と運転手が尋ねた。
窮地を逃れ安心したせいか、急にお腹が空いてきた。
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「ううん、私もわからないの」
「そう、困ったわね。 おかあさんもパトカーに追われて無我夢中で走り回って、気付いたらあなたがあそこにいたってわけ」
運転手もすっかり女性口調が板についてきた。
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だが、運転手はカップルのことなど気に留める様子もなく、タクシーのスピードを上げ、みるみる引き離してしまった。
「まずは知ってる道に出たいんだけど、あなた……えーっと……」
運転手は自発的におかあさん口調で切り出した。
「裕子」と、ささやく私。
「裕子、このあたりの道、詳しい?」
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バックミラー越しに後方を見ると、女が男に向かってなにかわめいている。
男は倒れていた自転車を起こしてサドルにまたがると、後ろに女を乗せ走り出した。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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運転手は、ダッシュボード左隅の電光掲示板を、「ムーンウォーク」から「回送」に切り替えた。
間違いない、さきほどの運転手だ。
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ドアが閉まるのも確認せず、タクシーは急発進した。
助かった……
安堵とともに、ふと疑念が湧きおこった。
べつに、むりして5文字にこだわらなくったっていいじゃない……
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タクシーは、私の1mほど手前でピタリと止まった。
すかさず、テールランプが5回点滅する。
は ・ や ・ く ・ 乗 ・ れ
私は開いた左後部座席のドアにつかまり、滑り込むようにして乗り込んだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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知らないわよ!
運転手の空気を読まない行動に、全身の力がみるみる抜けていった。
と、タクシーは私とカップルに向かって、いきなりバックのまま突進を始めた。
慌ててタクシーを避けるカップル。
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こうなったら、ちょっとおおげさだけど……
私はふりかざした手のひらを開け閉めした。
こ ・ ろ ・ さ ・ れ ・ る!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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とにかく、助けを求めなきゃ!
私がひどいアイメイクの女とムーンウォークの下手な男にからまれていることを伝えないと!
か ・ ら ・ ま ・ れ ・ て……
だめだ、5文字に収まらない!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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少し間が開いて、またテールランプが5回点滅した。
な ・ に ・ し ・ て ・ る?
え? 助けに来てくれたんじゃなかったの!?