裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
でも、こんなメッセージの送り方をしてくるのは、さっきの運転手に違いない。
きっと私を助けに来てくれたんだわ。
私はとりあえず右手を前に突き出し、握っては開きを5回繰り返して答えた。
し ・ ら ・ な ・ い ・ わ
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
おもむろに、タクシーのテールランプが5回点滅した。
こ ・ こ ・ は ・ ど ・ こ?
私だって知らないわよ!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
そのとき、遠くから車のエンジン音が聞こえてきた。
みるみるこちらに近づいてくる。
さきほど曲がった角の端から、黒い車体の後部が姿を現した。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
女と私の距離は、ほんの数メートルに縮まった。
ここまでね……
死ぬ前にいちどでいいから、大ネズミに会いたかった……
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
倒れた自転車を放ったまま、女はゆっくりと私に近づいてきた。
男も角を曲がり、こちらに近づいてくる。
と、男は自転車につまづき、派手に転んだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私はムーンウォークを止めた。
女も自転車にブレーキをかけた。
ちょっとよろめいて、自転車はその場に横倒しになった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
曲がり角の先は、とある住宅の玄関に続いていた。
つまり、行き止まりだった。
迫り来る自転車、そして少し遅れて男が追いつこうとしている。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私もムーンウォークのスピードを上げた。
と、道しるべが、すでに玉子風味のふりかけから、かつお風味に変っていることに気付いた。
いや、暗がりの中、ほんとうにかつお風味のふりかけが撒かれているのかも定かでない。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
しかし感心している場合じゃない。
女は私のほうを見ると、ペダルを漕ぐスピードを上げた。
まずい、このままでは追いつかれる。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
女は男に向かって怒鳴った。
「あんたがそんな風にジーンズの裾引きずって履いてるから、ムーンウォークのスピードが出ないのよ!」
あら、目が小さいくせに、いいこと言うじゃない!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
なかなかやるじゃない。
でも残念、夜道の無灯運転は違反よ。
自転車に乗った女は、ふらつきながらもすぐに男に追いつき、並んだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
暗がりの中、目を凝らす。
後ろ向きにサドルにまたがってペダルを漕ぐ、あの目の小さい女の背中が見えた。
さては、自転車でムーンウォークね!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
と、男の背後から(ムーンウォーク中なので正確には前方)自転車のベルの音が、けたたましく鳴り響いた。
チリン! チリン! チリン!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
だが、実力の差は明らかだ。
私は滑るようなムーンウォークで、男との距離をみるみる開けていく。
もはや、かつお風味のふりかけを撒いた場所にたどり着くまでもなく、男は私を見失うことだろう。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
男は焦った様子で、私に合わせて後ろ向きになった。
男はときおりちらちらと振り返っては、こちらの様子をうかがいつつ、とうていムーンウォークとは言えないぎこちない足取りで私の後を追っている。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私はいきなり走るのを止めると、男の方に身体を向けてムーンウォークに切り替えた。
思わずつられて立ち止まった男の顔に、とまどいの表情が浮かんだ。
よし! これなら勝てる!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
男の気配がどんどん背後に迫ってくる。
どうやら男は、カール・ルイスをイメージして走っているらしい。
体力差は歴然だ。
このままではいずれ追いつかれてしまう。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
とにかく男から逃げ切らなくちゃ!
せめてあの、かつお風味のふりかけを撒いたところまでたどり着ければ、男もこの道しるべを見失うはず。
私はジョイナーをイメージしながら全力疾走した。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私は一握り分のふりかけを手のひらに載せると、カップルに向かって投げつけた。
「あんたたちなんか、大ネズミが相手にしてくれるはずないわ!」
カップルがひるんだ隙に、私はもと来た道を走った。