裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「おい、なんだよテメェ!」
男が一歩前に出て言った。
私は悔しかった。
こんな目のちっちゃい女にだって、こうして味方になってくれる男がいる。
でも、私は独りきり。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「いくら目がちっちゃいからって、そのメイクはないでしょ?」
どうしちゃったんだろう、私。
初対面の相手に、こんなことを言うなんて。
旅が私を成長させたのかしら?
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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そんな私の心配をよそに、カップルはとあるマンションの前で立ち止まり、自動ドアを開けて中に入ろうとした。
「まって!」
つい、声を掛けてしまった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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住宅街に入り、よく似た造りの家々が立ち並ぶ道を、右へ左へと歩いて行く。
このカップル、まさか一晩中歩き続けるつもりじゃないでしょうね。
まずいわ、このまま朝を迎えたら、みんな道に撒かれたふりかけに気付いて、掃除してしまうわ。
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こんどは玉子風味のふりかけを撒きつつ、カップルと一定の距離をおきながら後をつける。
食べ物を粗末にしている・・・…
罪悪感が私を苛んだが、今は心を鬼にして前に進む。
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よくよく見ると、玉子風味のふりかけのほうが、色が黄色く夜道でも目立つ。
一方、かつお風味は地味な茶色で、目を凝らさないと暗がりでは判別がつきにくい。
後ろを振り返ると、ずっと遠くに駅の照明が見える。
ここまでならまだ大丈夫だ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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しばらくカップルの後をつけているうちに、さきほどから道しるべとして撒いているふりかけが、カツオ風味であることに気付いた。
しまった、飽きた玉子風味にしておけばよかった。
私はポケットにねじ込んでいた玉子風味のふりかけの袋を引っ張り出した。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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カップルの後姿がどんどん遠ざかる。
カップルはこれからどこへ向かうのかわからない。
私はためらいつつも、すこしずつふりかけを道に撒きながら、後をつけることにした。
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ネズミ……?
しかも話の様子からして、どうやら人間といっしょに記念撮影をしてくれるらしい。
もしかしたら、私が探している大ネズミとなにか関係があるのかもしれない。
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女は男の腕に手をまわし、甘えた声で話しかけた。
「ねぇ~、あたしミッキーといっしょに写真撮りたかったぁ~」
「あのネズミさんも忙しいからなぁ。 またこんど行ったときに撮ろうな」
と男。
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となりの男は、どこにでもいそうなチャラチャラとした格好。
ジーンズをずらして履いてはいないが、ボロボロのジーンズの裾を引きずって歩いていて、後ろから踏みつけてやりたい。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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と、改札から若いカップルが出てきた。
女はまるでパンダみたいなアイメイク。
化粧を落としたら、きっとピーナッツほどの大きさの目なんだわ。
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駅に近づくにつれ、街並みも賑やかになってきた。
大ネズミについての手掛かりといったら、浦安にいるってことだけ。
とにかく浦安に行こう。
ところで、何線かしら?
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『ネズミに会いに』を最初から読む
ふりかけを手に載せては舐め、載せては舐めしながら駅までの道を歩き続ける。
ときどき横をタクシーが通り過ぎる。
あの運転手さん、無事、パトカーから逃げ切れたのかしら。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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カツオ風味のふりかけの封を切って開けた。
新鮮なカツオの香りが夜風に乗って私を取り巻いた。
ごはんもほしいわ……
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今から家に戻ってコーヒー味のふりかけを作っている時間はない。
しかたがない、まずは大ネズミ本人に会ってから、べつの好物を聞き出すことにしよう。
私はふたたび駅に向かってムーンウォークを始めた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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コーヒー味のふりかけ……
さすがにコンビニには置いてなさそうね。
私はカツオ味とゆかり味のふりかけをレジに持っていき、支払いを済ませた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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若者は声を裏返らせて答えながら、読んでいた雑誌を放り出してコンビニの外へと駆けて行った。
ほら見なさい、ジーンズはきちんと履いたほうが、走りやすいでしょ?
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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若者は、あいかわらず立ち読みを続けていた。
私は有無を言わせぬ口調で若者に迫った。
「答えなさい! その大ネズミは玉子味、カツオ味、ゆかり味のどのふりかけが好きなの!?」
「み、みりゃわかるだろ? こんだけ色黒なんだ。 コ、コーヒー味に決まってるじゃねーか!」
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そういえば、大ネズミはどの味のふりかけが好きなんだろう。
会ったら一緒に舐めたいんだけど。
私はレジの前を通り過ぎ、もういちど雑誌コーナーへと戻った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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私は乾物類の置いてあるコーナーに行くと、ふりかけをいくつか手に取って見比べた。
さきほど買ったのは、玉子味のものだ。