裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
はっ!? なんだ、私の正体がばれたわけじゃなかったのね、あぶない、あぶない。
けど、なによ、どうかしてるって!
それはちょっと言い過ぎじゃない?
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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彼女はうつむき、ふたたび顔を上げると、苦笑いを浮かべながら口を開いた。
「ですよね?――私もあんなコンビニ袋をかぶって町を歩いてみたい、だなんて――どうかしてますよね、私」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「え?――で、ですよね――」
「はい、あなたと私はまったくの初対面。 なのに、私に向かってそんな大胆な発言を――」
私は厳しい表情で答えた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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彼女はつづけた。
「こんなこと言ったら、おかしいと思われるかもしれま――」
「ええ、奥さん。 それは口に出すまでもなく、おかしな考えだと思います」
私は彼女の言葉をさえぎった。
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飼い主は上目遣いで私を見ている。
「あの、その――コンビニ袋なんですけど――」
え!? まさか、昼間、私がかぶってたって感づかれた!?
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「いえ、そうじゃなくて――あ、コンビニ袋、ありがとうございます! それで、その――」
また口ごもってしまった。
「なにか気になることでも?」
と私。
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「そうですよね、本人もよろこんで食べているんですし――」
飼い主はそう言い終えると、すこしうつむいて黙り込んでしまった。
「あのぅ、やっぱり心配なんですか?」
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「まあ、おなか壊さないていどなら、いいんじゃないですか」
思えばゴソスケは、なんでも好き嫌いせずに食べてくれた。
グリーンピースとか、レバーとか……
いや、それ、私が嫌いで残したものを、ゴソスケにあげてたんだけど……
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「犬のくせに、長芋が好きなんですよ? たまたま息子が与えたら、それ以来味をしめちゃって」
「え? だいじょうぶなんですか? そんなもの食べさせて」
「うーん、あんまり大量に与えたらまずいんでしょうけど、せいぜい短冊に切って数切れだし――」
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思えばゴソスケも一匹で二匹分楽しめた。
つまり、犬と豚の……
「それでね、この子ったら、好物が変っていてね」
飼い主は話をつづけた。
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ゴソスケの鼻は広く上を向き、しっぽも細く巻いている。
ブルテリアっぽくもあるけど、たまに上げる鳴き声は、ブィブィと豚そのものだ。
予防接種のたび、獣医さんに、もしかして豚じゃないか? と聞いてみるのだが、まさか野良豚が国道を歩いてるわけないか、とお互い笑って済ましてしまうのだった。
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私はふと、実家の飼犬ゴソスケのことを思い出した。
ゴソスケもミックスだけど、いまだになにとなにのミックスなのか、さっぱり検討がつかない。
子犬のときに、近所の国道沿いを、独りでとぼとぼと歩いているところを保護したのだ。
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「知り合いの飼っているシェルティが産んだんだけど、その人ったら、顔だけ柴だなんて気持ち悪いって。 けど、愛嬌があってかわいいと思いません?」
うーん……まあ、一匹で二匹分楽しめるといえば、楽しめるけど……
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飼い主は、コンビニ袋越しに犬の糞を掴んで立ち上がると、袋をねじって結わえた。
「その子、おもしろいでしょ? ミックスなの、柴とシェルティの」
やっぱり――
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犬はというと、すっきり晴れ晴れとした表情で、口をだらしなく開け、私を見上げている。
「おーよしよし、おまえは柴なの?」
犬の頭を撫でながら、わざと飼い主に聞こえるように言った。
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「え? あ、ぜんぜん大丈夫ですよ! 底に穴が空いてるわけじゃないし――」
飼い主は、そう言いながら、コンビニ袋に右手を挿し入れ、植え込みの前にしゃがんだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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けど、ヘンな人って……こっちだって、命かかってるんだから……
「あーでも、やっぱり穴が空いてちゃ、使えないですよね?」
私はそっけない口調で飼い主に言った。
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「ほら、最近、ヘンな人が多いでしょ? 私、こどもと一緒に買い物に行った帰りだったんですけど、こどもがその人のことを指差して、声を上げるものだから――」
――あ! 思い出した! あのコンビニで長芋を買った親子だ!
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「あ、そういえば昼間、変った人を見たんですよ」
飼い主は見ていたコンビニ袋を下ろし、思い出したように話し出した。
「この近所なんですけど、ほんと、こんな穴の空いたコンビニ袋をかぶった人が、道を歩いていて」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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飼い主は、コンビニ袋を顔の高さまで掲げて眺めている。
「まるで人の顔みたい……目、鼻、口……」
す、するどい――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「あら? 穴が」
飼い主は、私があけた呼吸用の穴に目をとめた。
「あ、そう、そうでした! ちょっとワケあって、穴あいちゃってるんですけど……」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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私はポケットから畳んだコンビニ袋を取り出し、飼い主に差し出した。
ちょうど犬も用を足し終え、植え込みの土を後ろ足で派手に蹴り飛ばしている。
飼い主はコンビニ袋を受け取り、広げた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「かわいいですね、ワンちゃん。 あの、コンビニ袋でよければ、私持ってますけど……」
私は飼い主に向かって言った。
「あら、ほんとですか? 助かります」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「困ったわ。 ビニール袋、忘れてきちゃったみたい」
頭上で飼い主の声がした。
私はポンポンと犬の頭を軽く叩き、立ち上がった。