裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
タオルで顔を拭い、部屋着に着替えた。
リビングの窓を開け、空気を入れ替えると、ベッドの上に転がった。
さて、明日あらためて、浦安を目指すわけだけど――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
そんなことをぼんやり考えながら、家路に着いた。
玄関のドアを開け、かぶっていたコンビニ袋を脱ぐと、丸めてゴミ箱に放り込む。
洗面所に入り、顔を洗う。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
気がつくと、いつのまにか競歩をやめ、ゆっくりとした歩調になっていた。
わからない――私が本当にやりたいこと――すぐに答えは出ないと思う。
ただ、今は目の前の目標を達成したいだけ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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もちろん、なんにしたって努力なしに、最初から得意だった人なんていないと思う。
けど、考えてみたら私、努力以前に、そもそも一生をかけてやり通したいと思うほど熱中したことって、これまでなにかにあったかしら。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ほかに――なにかできることって――
アクションゲームは好きだけど、得意でもないし。
運動神経抜群でもなければ、頭だってそんなにいいわけじゃない。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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一連のダンスの中で、アクセントとしてのムーンウォーク。
最初から最後までムーンウォークだけで舞台を歩き回ったって、それじゃあ、ぜんぜん芸術的じゃないもの。
結局、ムーンウォークしかできない私は、せいぜい忘年会の余興で披露するくらいしかないわ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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思えば、私の得意なことってなんだろう。
これだけはぜったい誰にも負けない、そんなものってあるかしら。
たしかにムーンウォークは得意だけど、それだけができてもだめなんだと思う。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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歩を進めながら、幾度となく去来する不安感。
もし道中、偶然にも競歩選手に出くわしたら、どうしよう――
こんな自己流で、にわか仕立てのフォームを見られでもしたら――
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とにかく、立ち止まっているわけにもいかない。
私は自分なりの競歩で自宅に向かった。
そう、だれと競うのでもない、これは自分自身との戦いなのだ。
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けど、競歩ってどういう歩き方なのかしら?
たんに早足ってわけじゃないと思うんだけど。
たしか、必ず片足は地面に着いていないといけない、とかじゃなかったっけ?
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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公園から公道に出た。
ギャロップならスピードも出るし、早く帰れる。
だが、いくらコンビニ袋をかぶっているとはいえ、もしカオリと鉢合わせて、私だと勘付かれてはまずい。
ここは我慢して、競歩で帰ることにした。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ポケットから丸まったコンビニ袋を取り出すと、念のため、もう一度かぶった。
じんわりと汗で湿っていて気持ち悪い。
家に着いたら、すぐに顔を洗おう。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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だめだ、びくともしない。
力を抜き、包丁の柄から手を離した。
どっちにしろリュックサックは、片方の肩ベルトが破れ、包丁を突き立てられて穴が空き、使い物にならない。
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柄を両手で握り、幹に片足を当てて突っ張るように力を込める。
ふぬぬぬぬぅ――
頭に血が上り、顔が紅潮していくのを感じた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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この包丁、古道具屋に持って行けば、ちょっとはお金になるかしら?
もし買い取ってもらえなくても、自分で使えばいいし。
私は出刃包丁の柄を握り、引き抜こうとした。
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リュックサックを貫いて、木の幹に深々と突き立てられた出刃包丁。
たしかに手紙を読んだというメッセージか。
あるいは、地の果てまで追いかけるという殺意の表れか――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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私はカオリたち一団が、公園から十分に離れるのを、木の上でじっと待った。
――これで、もう、私を捜すのはあきらめたかしら。
幹にしがみつき、木を降りた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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座っている男たちに向かい、カオリが指図をすると、全員一斉に立ち上がった。
公園の出入口に向かうカオリとピーナッ子、自転車にまたがったイカゲソ。
一列に並び、そのあとに従う男たち。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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あ!――
リュックサックが、木の幹に貼りついたまま落ちない。
目を凝らして見ると、刃物かなにかで、リュックサックが木の幹に打ちつけられている。
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『ネズミに会いに』を最初から読む
彼女は手にしたリュックサックを木の幹に当てた。
一瞬、反対の手が動いた。
彼女は振り向くと、男たちの輪に戻った。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
ピーナッ子はカオリにリュックサックと手紙を返した。
ふたりはなにか話をしているが、ここからはまったく聞こえない。
すると、カオリはリュックサックを手に、椎の木の前へと歩いていった。