裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
もやしの袋を手に取り、買い物カゴに入れ、精肉コーナーへと向かう。
いちばんグラム表示の少ない豚バラ肉をカゴに入れた。
ああもう、おなかペコペコ――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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大粒の青森産にんにく――これよ――
まるまるとしたにんにくを一房手に取ると、店の入り口へ買い物カゴを取りに戻った。
あとは、お昼と晩の食材も買わなきゃ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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こどもは半ベソをかきながら、ぶつぶつとなにかをつぶやいていたが、母親は気にせず腕を掴んだまま、精肉コーナーへと引きずっていった。
私は野菜の並んでいる棚をざっと見渡すと、目当ての品を見つけた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「長芋は昨日買ってあげたばかりでしょ!? 今日は我慢しなさい!」
あ、なんだ、昨日買ってもらったのか。
母親はこどもの手を掴むと、むりやり起き上がらせた。
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母親らしき女性が、こどもを見下ろし叱りつけている。
「だって、98円だよ!? ねぇ、買ってよ! 買ってよぉ!」
なおもこどもは駄々をこねつづけている。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「やだやだ! 長芋買ってぇ! 長芋買ってよぉ!」
見ると、小学校低学年くらいの男の子が、床に転がり足をばたつかせている。
「ったく、この子は! 長芋長芋ってうるさいわねぇ!」
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イカゲソ、ピーナッ子、そのほかに顔見知りはだれもいないようだ。
顔からリュックサックを離して手に提げると、ドアを開けて店に入った。
と同時に、こどもの泣きわめく声が耳に飛び込んできた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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数分としないうちに、目的のコンビニに着いた。
店先ではワゴン一杯に夏野菜も売られている。
私はリックサックを下にずらして目だけ出し、ウィンドウ越しに店の中の様子をうかがった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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顔に当てたリュックサックの隙間から、進行方向とは逆側をうかがうと、自転車にまたがり手を振りつづけるピーナッ子が見えた。
ほんと単純なヤツよね。
いつも勝手に都合よく解釈し、納得してくれる――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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私も疑われないよう、さも親しみを込めた声で返した。
「ウトガリア、ウトガリア、ワイナクタキキモエコ、トドニウモ!」
「あなた、ウトガリアって国から来たモエコって言うの? トドに会いたいのね。 だったら動物園に行けば、きっと会えるわ!」
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「ジャ、ソォイウコトデ……」
私は空いているほうの手を軽く挙げ挨拶すると、横歩きの足を速めた。
「次は気をつけるのよ! 早く日本の交通ルールに慣れなさいね!」
背後でピーナッ子の叫ぶ声が聞こえた。
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「オォ! ゴォメンナァサァイ! ワァタシ、エイゴォ、シャベレマァセェン!」
とっさに私は、カタコトの日本語で返事をした。
「I see. しかたないわね……」
ピーナッ子が答えた。
どうやら通じたようだ。
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「Ah... Do you speak English?」
え!? なに? 英語? ピーナッ子、英語しゃべれるの!?
な、なまいきね! でも、私、英語しゃべれないし……
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よし、このまま得体の知れない外国人のフリをして立ち去ろう――
私は横歩きで、じりじりとその場から移動し始めた。
――と、ピーナッ子が口を開いた。
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「コッナーピ! コッナーピ! イーヤ! イーヤ!」
私は侮蔑した口調でわめきつづけた。
ピーナッ子は黙り込んだままだ。
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「え? な、なによ……、どこの国の人よ、アンタ……」
ピーナッ子はうろたえた口調でつぶやいた。
よし、このまま、まくし立てて煙に巻こう。
「ワイナコッリカワ! イタウョシノシタワ、ニウボイサンタナイタミタンア!」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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私はピーナッ子に背を向けたまま、片手でリュックサックを顔に当て、もう片方の手はてきとうに宙を指差しながら、わめいた。
「コッナーピ! ネワイサイチガメ、ズラワカイア!」
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うるさいわねぇ、言ってることぐらいわかって――
ん?――日本語?――逆向き?――
よし! ここはひとつ、外国人のふりで押し通すわよ。
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「あんた日本語わかんないの!? 逆向いてないで、こっち見ろって言ってんのよ!」
チリン! チリン! チリン!
ピーナッ子はイライラした様子で、自転車のベルを鳴らした。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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いやだめだ、欽ちゃん走りは両手の振りも重要だ。
リュックサックで顔を隠したままでは、完璧な欽ちゃん走りはできない。
ここは逃げ出すよりも、うまく他人になりすましたほうがいいわ。
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困った、いつまでも背中を向けたままではいられない。
向こうは自転車、こちらは横歩き――逃げ出してもすぐに追いつかれるわ。
せめて――欽ちゃん走りなら――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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でも、あれは、相当のどに負担をかけるし――
それに人前で出すときは、ステージの上だけだと決めてるの――
「なに? シカトぉ? 突っ立ってないで、こっち向きなさいよ!」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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どうしよう、なんて答えよう――
地声も裏声も知られちゃってる――
あと私が出せる声と言えば――デスメタル調くらい?
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私はピーナッ子であろう人物に背を向けたまま、身動きを取れないでいた。
リュックサックを見られたら、感付かれてしまう――
「ちょっと! なんとか言いなさいよ!」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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振り向いちゃだめだ、あいつだ!
警戒はしてたけど、やっぱり私を捜しに引き帰して来てたのね。
ひとりだけ? イカゲソも近くにいるのかしら?