裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
いきなり物騒な話ね!
けど、さっきの大家さんの姿を見ていたら、それもぜんぜん不思議じゃないけど――
「節子と私の家は、ある商店街で隣同士、お店を開いていたの。 節子は魚屋の娘、私は肉屋……」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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立ち昇る細い煙。
大家さんはパイプを吸い、静かに煙を吐いた。
「そう、あの頃の私たちといったら、顔を合わせれば、切り合っていたものだったわ」
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大家さんは、その場に工具箱を下ろすと、ポケットからパイプを取り出し、煙草を詰めだした。
話す気満々だ! この人――
パイプをくわえ、マッチを擦り、火を点ける。
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「ところで、大家さん、あの子の母親と、知り合いなんですか?」
私は話題をそらした。
「ん? まあ、ちょっとね……」
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「え? あ、いや、べ、べつに、私、なにも後ろめたいこと、してないですけど……。 だ、だって、出刃包丁振り回すような人ですよ? そりゃあ、警戒しますよ」
私はあわてて否定した。
「ま、たしかにそうよね」
大家さんは、うなずいた。
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「もしまた、あの掛け声が聞こえたら、あの子がこの辺りをうろついているのが、すぐにわかるはずです!」
「あら、裕子ちゃん、やけにあの子のこと、警戒してるのね。 まさかとは思うけど、もしかして……」
大家さんは、心配そうな顔で言った。
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「名付けて、『猫に鈴』作戦!」
そう、有名なイソップ童話――だったっけ?
ネズミにとっての危険、つまり猫が近寄って来たときに、あらかじめ猫の首に鈴を付けておけば、その音ですぐにわかる、ってやつね。
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「あの子に、裕子ちゃんの掛け声、使ってもいいって……。 あれ、裕子ちゃんのオリジナルなんでしょ?」
「よくぞ訊いて、くれました!」
私は、得意気に胸を張って答えた。
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大家さんだけじゃないわ、カオリも――
さくら姉さんの仲間だってことだけは、わかったけど、真昼間に出刃包丁を振り回すなんて、どうかしてるわ。
大家さんがいなかったら、私、今頃――
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けど、ほんとびっくりした。
まさか大家さん、くわえたパイプで、出刃包丁を受け止めるなんて――
いったい何者なの? この人――
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「そしたら裕子ちゃん、まるで、気に入らないおもちゃを手にした子どもみたいに、いきなり放り投げちゃうものだから……うふっ、くっくっくっ……」
――たしかに、どっちにしても放り出してたわ――だって、ペンチの開け閉め、ぜんぜん楽しくないんだもん。
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「私、裕子ちゃんに、『ここは私が相手をするから、とりあえず、ペンチを開け閉めして遊んでなさい』って、言ったつもりだったの」
大家さんは、人差し指で目尻を拭いながら言った。
――そんなのわからないわよ!
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「え? ああ、ペンチね。 うふっ、あはははは」
大家さんは思い出したように、笑い出した。
私、なにかおかしなことしたかしら?――
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「さて、じゃあ、私たちも、ここらへんでお開きにしましょうかね」
大家さんは、私が渡しそこねたペンチを拾い上げると、工具箱にしまい、手に提げた。
「あ、ごめんなさい! うまく渡せなくて……」
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黙ってカオリの背中を見送る大家さん――
大家さんとカオリの家族って、いったい、どういう関係なのかしら?
玄関を出て、左に折れようとするカオリに、私は声を掛けた。
「べ、べつに……使いたかったら、使ってもいいんだからね! 掛け声!」
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「ほかを当たるわ……」
カオリは短く言い捨てると、アパートの玄関に向かい、早足で歩き出した。
た、たすかった! どうやらこの場は、これで収まりそう。
あいつが去ったら、すぐにリュックサックを洗濯しないと!
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「ちょうど、この辺りで、ニンニク醤油の匂いが途切れて……そうしたら、たまたま、ショートヘアのあなたがいたものだから……」
カオリは私に視線を移して言った。
「い、いい迷惑だわ! しかも私の掛け声、使わせてあげてるのに」
私は大家さんの腕にしがみつきながら言った。
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「髪はショート、タヌキ寝入りとポールダンス……、あと、ムーンウォークが得意で、ニンニク醤油の匂いのするリュックを背負った子……なんて、そう珍しくないだろうし……」
そ、そうよ! そんな子、世の中いくらでも町を歩いてるわ!
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「ふん、あんたの仕事なんか知ったこっちゃない。 さっさとアパートの敷地内から出て行ってくれさえすれば、どうでもいいさ」
いや!――たのむから、こんなあぶない人、野放しにしないで!
いつのまにか私は、大家さんの袖を固く握り締めていた。
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カオリは大家さんをにらみつけたまま顔をそむけ、手で煙を払った。
「私の仕事は、ターゲットを、すみやかに仕留めること……。 いつまでもここで、時間を潰しているわけには、いかない……」
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どうやら大家さん、カオリたちの仲間ってわけじゃなさそう――
「あらあなた、母親とちがって、ずいぶん、ものわかりがいいのねぇ。 ま、私はどっちでもいいんだけど」
大家さんは不敵な笑みを浮かべ、カオリに向けて、フーッと煙草の煙を吐き出した。
わー! ちょっと、大家さん! 挑発するようなまねはやめて!
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カオリが口を開いた。
「まさか、こうもあっさり、あの一撃を止めるとは……。 いったん、ここは刃を納めたほうが、よさそうね……。 もしあなたが、母の言っていた‘あの人’なら……そう簡単には、言うことを聞いてもらえないだろうから……」
そう言い終えると、構えを解き、出刃包丁を袖の中に引っ込めた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ちょっと! やばいじゃない。
もしかしたら大家さんも、さくら姉さんたちと、なにかしら関係あるってこと?
こんな物騒な人たち二人に襲いかかられたら、私――