裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
思いもよらない私の反応にとまどう彼女。
「え、ああ、いえ、でも、私、その……」
彼女はなにかを言おうとして、口ごもった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「え? だって、ふつうはそんなものかぶったりしませんもの。さっきも言ったけど、変装ならもっと目立たない地味な恰好をするはずですし」
「じゃあ、奥さんは、コンビニ袋をかぶるのは、変装ではないと?」
「だと思います。 なにかのパフォーマンスじゃないかしら」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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まさか犬が、私に蹴られたことを告げ口するとは思えないが、彼女の気を逸らそうと、私は口を開いた。
「その、なんでコンビニ袋をかぶることが、自己表現だと思ったんですか?」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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彼女はそう言いながら、足元の柴顔犬に目をやった。
さきほどの私の蹴りが鳩尾にきまったのか、犬は眉間にシワを寄せて、地べたに伏せている。
「あら、どうしたの? 退屈しちゃった?」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「ああ、長芋の――」
つい、私は口に出した。
「え? あ、ああ、そうなんです。 さっきも言ったんですけど、息子ったら長芋好きで、この子にまで食べさせるものですから」
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「じゃあね――」
彼女は携帯電話を切り、ポケットにしまった。
「ごめんなさい、話の途中で。 息子から電話がかかってきちゃって――」
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「あ、ひろし? ――うん、もうじき帰るから。 ――え? 長芋? じゃあ、すりおろしておいてくれる? うん、うん――」
彼女が電話に出ている間、しつこく膝にまとわりついてくる犬の腹を、つま先で蹴り飛ばす。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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プルルルルル~
なんの面白みもない、携帯電話の無機質な呼び出し音が鳴り響いた。
彼女は慌ててジャージのポケットから携帯電話を取り出すと、耳に当てた。
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彼女は頬を紅潮させ、口早に言った。
「あ、もちろんこれは私の勝手な想像です。 もしかしたら全然そんな理由じゃないかもしれないし……」
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たとえ私が、あのコンビニ袋をかぶった本人でなかったとしても、そんな馬鹿げた推測するもんですか!
「はぁ?」
ついに私の口は、言葉らしきものを発した。
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足元の犬は、私から殺気が消えたのに安心したのか、やたらと膝に顔をこすりつけてくる。
飼い主に見つからないよう、軽く膝を曲げ、犬の顔を小突く。
自己表現ですって? とんだ勘違いだわ!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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あまりの馬鹿馬鹿しい想像に、体中の力が抜けていく。
空を見上げていた顔を下ろし、うつろな目で彼女を見た。
とりあえず、なにか言おうと口を開けたものの、まるで言葉が思い浮かばない。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「私が思うに、その人、自分なりの自己表現方法を模索していたのではないでしょうか」
彼女の言葉を聞き終えると同時に、握り締めた私の拳は緩んだ。
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「わかりました、でも、ぜったい笑わないでくださいね?」
飼い主が口を開いた。
もちろんよ、だって笑えない内容かもしれないから、ね――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「くぅ~ん」
足元で、柴犬顔のシェトランドシープドッグが、怯えた声で鳴いた。
殺気を押さえ込んだつもりだったが、やはり動物は敏感だ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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私は静かにつぶやいた。
「大丈夫です、ここにいるのはあなたと私の二人きり、思ってることをそのまま言ってみてください」
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「それで、ふと思ったんです……もしかしたら、その人って……」
彼女は話をつづける。
私は眉間にしわを寄せ、険しい顔つきで空を仰いだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「え、ええ……もちろん、私だって、そうは思うんです……。 でも、たとえば正体を隠したいのであれば、帽子を深くかぶったり、サングラスをかけるとかしたほうが、よっぽど目立たないでしょうし、そこでなぜコンビニ袋なのかっていう……。 それとも、また別の理由があったんでしょうか……」
んな!――うーん、たしかに、この人の言うとおりだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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私は感情を押し殺し、顔色を変えずに言った。
「いや、あのですね、その人だって、きっとコンビニ袋をかぶらなければならない、正当な理由があったんじゃないですか? でなきゃ、わざわざそんな恰好で町中を歩いたりしませんもの」