裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「その右臀部のキャラクターの居場所を教えてちょうだい」
若者は答えた。
「この大ネズミは、いつだって僕らの心の中に……」
私は最後まで聞かずに、その場を立ち去った。
バカバカしい。
わざわざジーンズがずりおちていることを指摘してあげなきゃよかった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
私の未来はわかっている。
きっと間もなく、この色黒で上半身はだかの大ネズミに会えるはず。
だから、占いは必要ない。
「わかったわ」
私は質問を選んだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
若者は答えた。
「質問はいちどにひとつまでだ。 どちらかを選ぶんだ」
ケチ!
急速にコーヒー無料チケットを渡す気が失せた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「今読んでいた雑誌の占いコーナーに書いてあったんだ。 『今日、あなたがだらしなくずりおろして履いたジーンズを指摘してくれる人が現れるでしょう』ってね」
と若者。
なんてよく当たる占いなんだ。
ふりかけと一緒に、その雑誌も買おう。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
待っていた? いったいなにを?
私は怖くなった。
手にしたままのマクドナルドのコーヒー無料チケットを渡して、この場から立ち去ろうかしら。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
この若者なら、なにか私の行き先の手掛かりを知っているかもしれない。
でも、先にこのだらしないジーンズの履き方をなんとかしてもらわなければ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
彼の横を通り過ぎようとしたとき、彼の右臀部のアップリケが目に入った。
上半身はだかにもかかわらず、赤いパンツと黄色い靴、そしてなぜか白い手袋を身に付けている。
そうだ! たしかにあのキャラクターに見覚えがある!
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
コンビニのドアを開け、中に入った。
左手の雑誌コーナーを見ると、中途半端なリーゼントで、だらしなくジーンズをずりおろして履いた若者が立ち読みをしている。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
命がけで私をコンビニに送り届けてくれた運転手のためにも、必ず新しいふりかけを手に入れてみせる。
もし歩いてこのコンビニまで戻ってきていたら、あと20分はかかっていたはずだから。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
遠くから、パトカーのサイレンの音が近付いてくる。
「追手が来たわ。 私が車でムーンウォークするのが気に入らなかったみたい」
母、いや、運転手は私にコーヒーチケットの束を押しつけると、そそくさとタクシーに乗り込んだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「でもこれって、お母さんの大切な……」
私はためらった。
「いいの、お母さんばっかり色黒になってもしかたないもの」
私だって、べつに色黒になりたいわけじゃない。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
運転手は、ふとなにかを思い出したように、身に付けたウエストポーチのファスナーを開け、中を探った。
「よかったら使って」
手渡された紙の束を見ると、それはマクドナルドのコーヒー無料チケットだった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「束の間だったけど、あなたのおかあさんでいられてよかったわ」
タクシーの運転手は、潤んだ目で私に言った。
やめて……別れが辛くなるじゃない……
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
タクシーの中から窓の外を見ると、目の前には、さきほど立ち寄ったコンビニがあった。
私は支払いを済ませ、タクシーから降りた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
「着いたわよ!」
頭上で野太い声が響いた。
夢から覚めた。
千切りキャベツだと思って手にしていたものは、自分の靴ヒモだった。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
母はイカの天ぷらを揚げ終えると、油をよく切り、高く盛られた千切りキャベツの横に積み重ねていった。
我が家のルールでは、イカの天ぷらは積み重ねられた一番下から取っていかなければならない。
もし天ぷらの山を崩したら、その日は千切りキャベツしか食べさせてもらえないのだ。