裕子の小説置場☆
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
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千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
カオリは狂ったように警笛を吹き鳴らしながら、出刃包丁を振り上げ、私に覆いかぶさってきた。
ここまで――か――
ピーッ ピーッ ピーッ
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
窓ガラスの破れる音とともに、エプロンを腰に巻き、魚包丁を手にした男たちが部屋になだれ込んできた。
いや――先頭に立っているのは――警笛を口にくわえたカオリだ!
ピーーーーッ
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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早く洗濯、終わらないかしら――
だんだんお腹が空いてきた。
リュックサックを干したら、スーパーにもやしと牛乳を買いに行こう。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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グゴゴゴゴゴゴゴゴォ――
洗濯機が脱水を始めた。
リュックサックさえ洗い終えれば、ひとまずカオリにとっての有力な手がかりは消えるはずだ。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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このテレビ、地デジ化後もそのまま使えるのかしら?
なにか特別な装置とか必要になるの?
まあ、わからないことが出てきたら、大家さんに聞けばいいんだろうけど……
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
これがうわさに聞く、地デジ化というやつね?
正直私は、いまだにこの地デジ化というものの正体を、よくわかっていない。
まさかとは思うけど、もしかして、すでに地デジ化は進んでいるの?
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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どういうわけか、ちょっと前から、ブラウン管の上下に黒い帯が入るようになった。
ときどき、その黒い帯に、小さく滲んだ文字が映し出される。
「ご覧のチャンネルは2011年7月で終了します」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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洗濯機の蓋を閉め、洗面所を出ると、テレビの前でしゃがみ、膝を抱えて体育座りをした。
やっぱり今日一日は、家でじっとファミコンでもしてるべきかしら――
テレビのリモコンに手を伸ばし、スイッチを入れる。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ガタン・ゴトン――ガタン・ゴトン――ガタン――ゴボゴボゴボ――
洗濯機は排水を始めた。
あ、ちゃんと蓋をしないと、脱水してくれないんだった。
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けど、カオリはしばらく節子さんとは、会ってないと言ってた。
それに、いい歳した大人が、あんなお子ちゃま連中の頼みごと、いちいち聞くとも思えないから、節子さんはさくら姉さんじゃないと思う。
となると、確実とは言えないけど、カオリかその兄弟のだれかが、さくら姉さんってこと?
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それと大家さんは、節子さんにはカオリを含め、3人の子どもがいるとも言ってた。
どうやら、さくら姉さんって、カオリか節子さん、あるいはその家族のだれかのことだと考えて、まちがいないようね――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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佐倉……さくら……
カオリは、ピーナッ子たちしか知らない私の特徴を知っていた。
カオリの母親の実家は、佐倉水産という魚屋。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ガタン、ゴトン――ガタン、ゴトン――
私は洗濯機の中で回るリュックサックを見つめながら、大家さんの言葉を思い出していた。
その魚屋の名は――佐倉水産――
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「その、お店の名前は……?」
「どうしたの? さっきの子にまた会いたいの?」
「あ……いえ、なるべく正体を知っていたほうが、警戒しやすいかなぁって……」
私は苦笑いで答えた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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私はなんだか、胸騒ぎがした。
「その……節子さんの魚屋さんは、まだあるんでしょうか?」
「そうねぇ、さっきの子も出刃包丁持っていたから、もしかしたら、お店を継いだのかもね」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「噂?」
私はつい、口に出した。
大家さんは階段を上りきると、私のほうを振り返り、微笑みながら言った。
「ま、その話は、またこんどね」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
トン・トン・トン―――
大家さんは、階段を上っていく。
「それっきりね、節子とは。 でも、いろいろ噂は聞こえてきたわ」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
大家さんは、屈んで工具箱を手に持つと、アパートの二階に上がる階段へと向かった。
「日が昇り、出発の時刻が来た。 それでも私たちは、手を止めなかった。 父は、嫌がる私の首根っこを掴むと、家財の詰まったトラックの荷台に放り込み、新しい住まいに向けてトラックのアクセルを踏み込んだ」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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「お互い腕が拮抗していたしね。真剣に打ち合っていると、意外と怪我をすることもないのよ」
大家さんはパイプをくわえ、また口から離すと煙を吐いた。
「そのうち、私の家は隣町に引っ越すことになった。 節子にはなにも言わなかったんだけどね。 町を離れる日、彼女もなにか感じ取ったんだろう。 いつものように、店先で打ち合いが始まったわ――けど、その日は、陽が沈み店を閉じたあとも、夜が明けるまで、私たちはただひたすら無言で打ち合っていた」
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
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ふつう、親は止めないものかしら――客寄せのための、恰好の見世物ってわけか。
「それで、怪我とかは、しなかったんですか?」
私は訊いた。
千葉の浦安に住むという巨大ネズミを探しに、旅に出た私……
『ネズミに会いに』を最初から読む
大家さんはパイプをくゆらせながら、昔を懐かしむような目つきで、遠くの空を見つめていた。
「いま思えば、肉だ魚だと、なにをいがみ合ってたのかねぇ……。 毎日のように店先に出ては、牛刀と柳刃包丁で打ち合っていた。 まあ、それを目当てにお店に来てくれるお客さんも、少なからずいたんだけどね」